美容学校講師のブログ講義(香粧品化学)

美容師を目指す向けて努力している学生のために、少しでもお役に立てればと、香粧品化学やアンチエイジングに関するお話をしていきます。

指導要領改訂

高校の理科、特に生物はとんでもなくぐちゃぐちゃに改悪されてしまったりで現場は大混乱ですが、美容の化学「香粧品」でも改訂がありました。これまでも改訂はなされてきておりますが、こちらもまた従来よりは変更点が多い、というのが今月から美容科1年生の講義が始まって、実際やってみての印象です。従いましてこのページでもそれを十分に配慮して更新をしていきます。

ひとまず、出講先の宮崎のホテルでフェイシャルケアしてから出掛けてきます。一応これでもアンチエイジング研究家なので。

美容師国家試験解説79

第37回美容師国家試験より引用。

 

油脂に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a 油脂は、脂肪酸グリセリンエステルである。

→◯ エステルというのは結合の仕方を表現したものです。そして、脂肪酸グリセリンからなるエステルを油脂、脂肪酸高級アルコールからなるエステルをロウと呼びます。

 

b 石けんは、油脂を塩化カリウムでけん化してつくる。

→✕ けん化とはエステルのアルカリによる加水分解です。従って、アルカリではない塩化カリウムによってけん化はできません。水酸化カリウム水酸化ナトリウムを用いる必要があります。

 

c ヒマシ油は、動物性の油脂である。

→✕ 植物性油脂ですね。

 

d 油脂が酸素や日光の働きにより変質することを酸敗という。

→◯ 油脂は酸敗しやすいため、油性原料を香粧品に用いる際には抗酸化剤を加える、不乾性油を用いるなどの条件が求められます。

 

① aとb  ② bとc  ③ cとd  ④ aとd

 

従って上記選択肢から④を選んだ人気が勝ち!ということになります。

 

#美容師国家試験#過去問解説#香粧品#油脂#ヒマシ油#グリセリン

美容師国家試験解説78

第37回美容師国家試験より引用。

酸と塩基に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

① 赤色リトマス紙は塩基性溶液では変色しない。

→× 塩基(アルカリ)性溶液は赤色リトマス紙を青色に変色させることができます。なお、酸性溶液は青色リトマス紙を赤色に変色させることができます。

 

塩基性溶液のpHは7より小さい。

→× pHは0~14の範囲で用いられる値で、常温では「pH=7で中性」、これを下回り0に近づくほど強酸性、7を上回り、14に近づくほど強アルカリ性となります。

 

③ 酢酸は強酸である。

→× 悩ましい問題です。「強い」「弱い」というのは主観的なものであることから、こうした出題をする場合は比較対象が本来は必要です。酢酸は高校の化学基礎の範囲で考えれば代表的な弱酸ですが、これが有機化学の領域になると、二酸化炭素やフェノールよりも明らかに強酸です。したがって、厳密にはグレーゾーンですので、この選択肢の判断は他の選択肢との兼ね合いで判断することとして、④次第ということになるかと思われます。

 

④ 塩酸は無機酸である。

→〇(正解) 塩酸は塩化水素の水溶液です。塩化水素の化学式は、水素と塩素からなることからHClと表記されますが、このことからわかるように炭素原子が含まれておりませんので、無機酸の扱いになります。このことから④があきらかに正しいので、③は「一概には強酸とはいえない」として不正解とします。

美容師国家試験解説77

第37回美容師国家試験より引用。

 

酸化染毛剤の成分とその性質に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

過酸化水素水は染料中間体を酸化する。

→〇 第1剤に含まれる無色の染料中間体(これこそがあのパラフェニレンジアミン)を酸化して発色するために用いられる第2剤の主成分がこの過酸化水素水です。

 

② ニトロパラフェニレンジアミンは本来無色である。

→×(正解)ややこしいところですよね。パラフェニレンジアミンは「染料中間体で、はじめ無色、酸化されて発色」ですが、ニトロパラフェニレンジアミンは「直接染料で、はじめから有色」です。

 

③ レゾルシンは染料中間体による発色の色調を変える。

→〇 レゾルシンは代表的な調色剤(カップラー)です。本問にあるように、色調調節に使用します。

 

アンモニア水は液性をアルカリ性にする。

→〇 アンモニアは香粧品によく用いられるアルカリ剤です。毛髪内のイオン結合を切断し、毛髪を膨潤させます。高校化学(大学受験含む)ではアンモニアといえば弱アルカリの代表のような存在ですが、香粧品化学の範囲内ではアンモニアは強アルカリの扱いになります。

 

 

美容師国家試験解説76

第37回美容師国家試験より引用。

 

次の有機酸のうち、パーマ剤第1剤の有効成分(還元剤)として正しいものはどれか。

グルタミン酸

→× グルタミン酸は旨味成分にもなるアミノ酸の一種であり、アミノ酸自体は広い意味における有機酸には該当しますが、還元剤としては作用しません。

 

② 酢酸

→× 質量比にして4%程度に薄めた酢酸は「食酢」として使用されておりますが、これもまた還元剤としては作用しません。

 

③ パルミチン酸

→× 炭素原子間に二重結合をもたない高級飽和脂肪酸です。油脂の加水分解で得られる場合もありますが、還元剤としては作用しません。なお、「高級」というのは「炭素原子を多く含む」という意味合いであり、決して値段的に高いというようなことではありません。

 

④ チオグリコール酸

→〇(正解) パーマ剤の第1剤といえば、毛髪中のイオン結合を切断して膨潤させるためのアルカリ剤と、毛髪中のシスチン結合を切断する還元剤ですが、この還元剤にはチオグリコール酸またはシステインが使用されます。効果は大きいけれども、刺激が強いので合わないヒトもいるチオグリコール酸と、効果は劣るけれども、刺激がほとんどないアミノ酸の一種であるシステインというようにそれぞれの特徴があります。

 

 

美容師国家試験解説75

第37回美容師国家試験より引用。

 

紫外線とサンケア製品に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

① 長波長紫外線は、メラニン色素を徐々に増加させる。

→〇 長波長紫外線とはUVAのことであり、そのUVAに起因する日焼けがこのメラニン増加による肌の黒化、すなわちサンタンです。

 

② サンタン製品は、サンスクリーン製品に比べてUVAの吸収が弱い。

→〇 サンタン製品は、UVBに起因する日焼けであるサンバーンを防ぐためにUVBのみを吸収する製品であるため、UVAに対する吸収はほとんど見られません。

 

PA分類は、中波長紫外線の防御効果を示す。

→×(正解) PA分類はUVAに対する防御効果の指標であり、中波長紫外線(UVB)に対する防御効果はSPF値で示されます。

 

SPF値の大きい製品を使った方が、サンバーン(日焼け紅斑)を起こしにくい。

→〇 SPF値が大きいとその分だけUVBを吸収してくれるのでサンバーンは起こりにくくなります。

美容師国家試験解説74

第37回美容師国家試験より引用。

 

香粧品に使われる成分とその目的に関する次の組合せのうち、正しいものはどれか。

①クロルヘキシジングルコン酸塩 ー 紫外線吸収剤

→✕ 名前が長すぎて覚えにくいですね。「クロル」は塩素系、つまり殺菌剤と認識できれば十分です。

 

セラミド ー 収れん剤

→✕ セラミドは数多くある保湿剤の1つでしたね。

 

パラアミノ安息香酸エステル類 ー 殺菌剤

→✕ 「パラアミノ」と来れば紫外線吸収剤、「パラオキシ」と来れば防腐剤でした。

 

ジブチルヒドロキシトルエン ー 抗酸化剤

→◯ 抗酸化剤は酸化防止剤とも呼びます。「ブチル」の文字が入っているものはこれに相当します。

 

#美容師国家試験#過去問解説#配合成分#保湿#セラミド

美容師国家試験解説73

第37回美容師国家試験より引用。

 

香粧品用の色材に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

① カーボンブラックは、着色顔料である。

→◯ カーボンブラックはアイブロウペンシルなどに用いられる、文字通り黒色の顔料です。ただし、発ガン性のベンゾピレンを含有するため、配合量は制限されます。

 

酸化亜鉛は、白色顔料である。

→◯ 酸化亜鉛は酸化チタンに次ぐ被覆力をもつ白色顔料であり、消炎および収れん作用も兼ね備えています。

 

③ 雲母チタンは、光輝性顔料である。

→◯ 塗布した箇所に光沢を与えるこの光輝性顔料は本問の通り雲母チタンであり、酸化チタンではないので注意しましょう。

 

βカロチンは、法定色素である。

→✕(正解) βカロチンコチニールは生物由来のため、天然色素に分類されます。

 

#美容師国家試験#過去問解説#香粧品#色材

美容師国家試験解説72

第36回美容師国家試験より引用。

 

芳香製品に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

① 香水は、メタノールに調合香料を溶解したものである。

 →× メタノールは例外なく配合禁止です。これは幾度ともなく出題されているテーマですね。

 

② オーデコロンは、パヒュームコロンよりも香料の配合量が少ない。

 →〇(正解) オーデコロンは主に柑橘系の香料を含むものが多く、ただしその配合量はごく少ないため、2時間ほどで香りはほぼなくなります。一方でパヒュームコロンは香水に次ぐ香り成分配合量を維持しています。

 

③ 香料の発散により、3段階に分けられる香水の香りのうち、2時間以上残るものを「うわだち」という。

 →× 「うわだち」は「トップノート」とも呼ばれ、デオドラント剤を着用した、ごく初めの香りです。本問で述べている2時間以上残るものは「あとのこり」または「ベースノート」と呼ばれます。こうした概念は、デオドラント剤に用いる香料は揮発性の異なる複数の香り成分をブレンドしていることで、時間の経過につれてこれらの混合比率が変化することから生じています。

 

④ 香水には合成香料は使用されない。

 →× 動物や植物に由来する天然香料だけではなく、人工的に合成された合成香料(エステルなど)も多々用いられています。 

美容師国家試験解説71

第36回美容師国家試験より引用。

 

酸化染毛剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

① 酸化染毛剤は永久染毛剤に分類される。

 →〇 ヘアカラーのカテゴリーは、顔料を毛髪の表面に付着させるだけの一時染毛料、分子がごく小さいため、毛髪内に浸透してもやがて外に出ていく酸性(HC)染料は化粧品に分類されますが、酸化染毛剤はメラニン色素自体を酸化分解することから永久染毛剤として医薬部外品に分類されます。

 

② 第1剤(1液)に含まれる染料中間体は、酸化されて発色する。

 →〇 第1剤にはパラフェニレンジアミンに代表される染料中間体が含まれており、これに第2剤として酸化剤を添加すると染料中間体が発色します。さらにレゾルシンのような調色剤を用いて色調を変化させていきます。

 

③ 第2剤(2液)に含まれる過酸化水素水には、メラニンに作用して髪を黒くする働きがある。

 →×(正解) まず、メラニン色素こそが毛髪の黒色の根源であること。そのメラニンに対して過酸化水素のような酸化剤を与えると分解します。そのため、むしろ毛髪の黒色が解消されていくことになります。

 

④ 妊娠中の人の髪に使用してはならない。

 →〇 酸化染毛剤は生体内に化学反応を引き起こすのですから、胎児への影響を考慮し、妊娠中の人には用いません。

 

美容師国家試験解説70

第36回美容師国家試験より引用。

 

パーマネントウェーブの原理に関する次の文章の( )に入る語句の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

 

毛髪を形成するケラチンの架橋構造(側鎖)の( A )結合を第1剤(1液)に含まれるチオグリコール酸などの( B )により切断し、次に第2剤(2液)を作用させると、含まれる( C )などの薬剤の働きにより架橋構造にずれを生じた状態で( A )結合が復元し、ウェーブが形成される。

 

① A:シスチン  B:還元剤  C:臭素酸カリウム

→〇(正解) ケラチンを構成するアミノ酸の中にはチオール基(ーSH)をもつシステインが含まれており、システインのチオール基どうしで脱水素反応を経てシスチン結合(-S-S-:ジスルフィド結合ともいう)が形成されています。パーマをかける場合は、このシスチン結合を水素を与えることでもとのチオール基に戻して切断する還元剤が第1剤として必要になります。そこでロッドに毛髪を巻き付けてから臭素酸カリウムなどの酸化剤でシスチン結合を再形成させて一連の作業を終えることになります。

 

② A:シスチン  B:酸化剤  C:アンモニア

→× 第1剤はあくまで酸化剤です。なお、アンモニアは毛髪を膨潤させるために第1剤

に加えるアルカリ剤です。

 

③ A:ペプチド  B:還元剤  C:アンモニア

→× ペプチド結合はシステインに限らず、すべてのアミノ酸同士で形成される、タンパク質中に見られるごく一般的な化学結合であり、これは還元剤を用いても切断不可能です。

 

④ A:ペプチド  B:酸化剤  C:臭素酸カリウム

→× 第1剤による切断の対象はシスチン結合であり、臭素酸カリウム過酸化水素のような酸化剤が第2剤として使用されます。

美容師国家試験解説69

第36回美容師国家試験より引用。

 

頭皮・毛髪用香粧品とその配合成分に関する次の記述の組合せのうち、誤っているものはどれか。

 

① ヘアリンス剤 ー 陽イオン界面活性剤

→〇 陽イオン(カチオン)界面活性剤といえば、ベンザルコニウム塩化物のような殺菌剤および第四級アンモニウム塩のような帯電防止剤が代表例となり、ヘアリンス剤としては後者が特によく使用されています。

 

② ヘアブリーチ剤 - アセチルシステイン

→×(正解) 結局のところ「システイン」ですので、パーマ剤の第1剤である還元剤として使用されています。なお、ヘアブリーチ剤は現指導要領においては脱色剤と表現されることが一般的で、過酸化水素水を含み、メラニン色素を酸化分解します。

 

③ 育毛剤 ー 抗男性ホルモン剤

→〇 頭部の脱毛の要因の一つに、男性ホルモンが強く作用しすぎる点がありますが、フィナステリドのような抗男性ホルモンを用いることにより、脱毛の回避が期待されています。なお、フィナステリドは香粧品の配合成分の中では珍しく医薬品に分類されます。

 

④ 酸化染毛剤 ー パラフェニレンジアミン

→〇 酸化剤の作用により発色する染料中間体の代表例ともいえるこのパラフェニレンジアミンは、アレルギー症状を引き起こす場合もあるため、パッチテストの対象成分になっていることも合わせて押さえておきましょう。

美容師国家試験解説68

第36回美容師国家試験より引用。

 

香粧品に用いられる色材に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

① ベンガラは酸化鉄顔料である。

→〇 三酸化二鉄FeOを主成分とした古くから香粧品に用いられている赤色の着色顔料です。この三酸化二鉄は鉄鉱石の主成分であり、これを一酸化炭素COにより還元して鉄Feの単体を得ることができます。

 

② タール色素は法定色素ともいわれる。

→〇 青色〇号とか赤色〇号だのと表記されているものがこれに該当します。タール色素は有機合成色素とも呼ばれますが、いずれにせよ厚労省が指定した成分に限り香粧品への配合が可能になっております。

 

③ 雲母チタンは光輝性顔料である。

→〇 以前にも触れたことがあるかと思われますが、チタンがらみの成分は三つ。一つは最強の白色顔料である酸化チタン、もう一つがこの光輝性顔料である雲母チタンです。そして最後に紫外線散乱剤の微粒子酸化チタンです。

 

④ β-カロチンは有機合成色素である。

→×(正解) β-カロチンはニンジンの中に含まれる橙色の色素です。動物や植物の体内から抽出される色素や高分子化合物はすべて天然色素および天然高分子化合物に分類されます。天然色素としてはβカロチンの他にもエンジムシから抽出されるコチニール色素(青赤色)も合わせて押さえておきましょう。 

 

美容師国家試験解説67

第36回美容師国家試験より引用

 

界面活性剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

① 石けんは陽イオン界面活性剤である。

→× 石けんの本体は高級脂肪酸のなすカルボン酸イオンであり、これが(ー)イオンであるため、陰イオン界面活性剤に相当します。石けんに限らず、陰イオン界面活性剤は一般に洗浄効果を持ちます。

 

② 石けんは油脂を加水分解してつくる。

→〇(正解) 油脂を加水分解すると、グリセリン脂肪酸が生じます。この脂肪酸塩が石けんなのですが、加水分解水酸化ナトリウムを用いると硬質石けんとなり、水酸化カリウムを用いると軟質石けんとなります。

 

③ 陽イオン界面活性を水に溶かすと、親水基は負電荷を帯びる。

→× 陽イオン界面活性剤は本体が(+)イオンになるため、陽イオン界面活性剤に相当します。陽イオン界面活性剤は一般に、帯電防止効果または殺菌効果をもちます。

 

④ 界面活性剤は乳液に使用されることはない。

→× 界面活性剤の役割のひとつに油と水をなじみやすくするというものがあります。油性原料が水に溶けてくると乳化します。そのうち、O/W型(一部W/O型もありますが)のものが乳液になります。また、乳液やクリームには非イオン型界面活性剤が用いられます。